楽しみながら続ける 防災アクション10【ニュースがわかる9月号】

仲間って必要なの? <この世界のしくみ>

 誰もが一度は抱いたことのあるような問いについて、哲学者が、子どもたちとともに考えていくという形で書かれた「子どもの哲学」シリーズの第2弾『この世界のしくみ 子どもの哲学2』(毎日新聞出版刊)。大人も子どももいっしょになって、ゆっくりと考えてみませんか。本書から一部をご紹介します。本書のもとになった「てつがくカフェ」は、毎日小学生新聞で毎週木曜日に連載中です。

仲間ってどういう人のこと?……ツチヤさん

 「仲間」って、ちょっと不思議な言葉だ。「友達」と似た意味で使われることもあるけど、イコールではない。だって、たとえば、同じサッカーチームの選手たちは、一致団結して敵チームと戦う「仲間」だけど、だからといって、全員が「友達」であるとは限らない(むしろそうでないことの方が多い)もの。だとすると、「仲間」っていったいどういう人のことを言うんだろう?

 たぶん仲間っていうのは、同じ仕事をしていたり、同じ目標を抱いていたりして、それに一緒に取り組んでいる人のことだ。そうだとしたら、仲間が必要かどうかという問いは、自分がどういう仕事に取り組んでいるかとか、どういうことをやりたいかとかによって答えが変わってくる。自分一人ではできそうにないことをするには、仲間を探す必要があるけど、自分と仲間との間でやりたいことや目標がズレていたら、かえって仲間がじゃまになることもある。取り組むことがらによっては、あえて仲間を見つけずに一人で黙々と行った方がかえってうまくいくこともあるし、仲間の助けがなければ決して成し遂げられないこともある。そういうそれぞれの場合や状況を踏まえて考えないと、この問いには答えを出せない。だから、「仲間って必要なの?」という問いにはいつでも成り立つ答えは存在しないというのが、僕の答えだ。

会ったこともない仲間……ムラセさん

 たしかに、友達と仲間は違う。友達よりも「仲間」だと思えるのは、ふだん一緒に話をしたり遊んだりはしないけど、何かのときには互いに協力し合う関係の人だ。ということは、仲間の中には、知り合いじゃないけど、協力し合っている人も含まれるはずだ。たとえば、教科書会社の人は、教科書をもっとわかりやすいものにしようとしている。だから、先生にとっては、授業を良くしようとしている仲間の一人ってことになる。ぜんぜん別のところにいても同じ目標をもって進んでいる仲間だ。

 想像してほしい。君が目標にして頑張っていることと同じ目標をもっている、まだ知らない誰かを。その誰かと君は話をしたことも、会ったことも、ない。でも、君とその人は同じ目標に向かって一緒に進む「仲間」だ。ゲームの中で魔王を倒すために世界各地で戦っている勇者の仲間たちがいるように、その人と君は、すでに仲間なんだ。

 だから、仲間は、必要というよりは、いつでもいてしまうものだ。だって、僕たちはたいてい何かをしているし、同じ目標をもっている人は世界中を探せばきっといるからだ。つまり、君はいつでも誰かと何かをしてしまっていて、知らないとしても、仲間がいてしまうんだ。そして、それはとても心強いことだとも思うんだ。

仲間はいいものなのか?……コーノさん

 あなたがそういう質問をするからには、先生から「仲間はいいものだ」とか言われたり、クラスメートから「おまえは誰の仲間なんだ」とか言われたりしたのかな。大人も子どももみんな仲間を作りたがるよね。どうしてかな。

 友達の意味の反対は何かな? 「友じゃない人」みたいな感じで一言で言い表せないね。では、仲間の意味の反対は何かな。「敵」じゃないかな。本当は、世の中は、仲間でも敵でもない人がたくさんいる。というよりも、人類のほとんどは自分の仲間でも敵でもない。でも、たぶん、人は仲間になっておけば、敵ではなくなると思っているんだ。敵になるかもしれない人とか、仲間でないし敵でもない中途半端な人とかがいると、みがまえてしまう人がいる。まわりに仲間でない人といると緊張してしまう人がいるんだ。

 そして、そういう人はみんな緊張感が嫌いだ。自分が安心してうち解けて、なんでも許してもらえる、なれ合える人間関係が好きなんだ。でも、誰にでもいつでも、「仲間になろうよ」と言う人たちって、他人についつい甘えたり、無理やわがままを言ったりすることがある。人に迷惑をかけても、「仲間じゃないか」ってごまかしたいんだ。

 それから、仲間好きの人たちは競争が嫌いだ。テニスのシングルス、柔道の試合、ピアノ・コンクールではすべての人がライバルだ。仲間なんていない。多くの人は一人が嫌いなんだ。死ぬときはいつも人間は一人なのにね。私は、人のことを「仲間だ、仲間だ」って言う人とは、あんまり仲間になりたくない。


「てつがくカフェ」は毎日小学生新聞で毎週木曜日に連載中

<5人の哲学者をご紹介>

河野哲也(こうの・てつや)

立教大学文学部教育学科教授。専門は哲学、倫理学、教育哲学。NPO法人「こども哲学 おとな哲学 アーダコーダ」副代表理事。著書に『道徳を問いなおす』、『「こども哲学」で対話力と思考力を育てる』、共著に『子どもの哲学』ほか。

土屋陽介(つちや・ようすけ)

開智日本橋学園中学高等学校教諭、開智国際大学教育学部非常勤講師。専門は哲学教育、教育哲学現代哲学。NPO法人「こども哲学 おとな哲学アーダコーダ」理事。共著に『子どもの哲学』、『こころのナゾとき』シリーズほか。

村瀬智之(むらせ・ともゆき)

東京工業高等専門学校一般教育科准教授。専門は現代哲学・哲学教育。共著に『子どもの哲学』、『哲学トレーニング』(1・2巻)、監訳に『教えて!哲学者たち』(上・下巻)ほか。

神戸和佳子(ごうど・わかこ)

東洋大学京北中学高等学校非常勤講師、東京大学大学院教育学研究科博士課程在学。フリーランスで哲学講座、哲学相談を行う。共著に『子どもの哲学』ほか。

松川絵里(まつかわ・えり)

大阪大学コミュニケーションデザイン・センター特任研究員を経て、フリーランスで公民館、福祉施設、カフェ、本屋、学校などで哲学対話を企画・進行。「カフェフィロ」副代表。共著に『哲学カフェのつくりかた』ほか。

 

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