大阪・関西万博まるわかりガイド【月刊ニュースがわかる7月号】

「関税」って何なの?【ニュース知りたいんジャー】

小麦こむぎ海外かいがいからったり、自動車じどうしゃ海外かいがいったりと、わたしたちのらしや経済けいざいは、貿易ぼうえきがないとちません。しかし、アメリカのトランプ政権せいけんは、各国かっこくからの輸入品ゆにゅうひんへの関税かんぜいげ、貿易ぼうえき世界経済せかいけいざいへの影響えいきょう心配しんぱいされています。そもそも、関税かんぜい役割やくわりとは、なんなのでしょうか。

 どんな役割やくわりがあるの?

 関税かんぜいは、海外かいがいから食料品しょくりょうひん自動車じどうしゃなどの商品しょうひん輸入品ゆにゅうひん)にかけられる税金ぜいきんです。日本にっぽんでは、外国がいこくから商品しょうひん輸入ゆにゅうしたものは、日本政府にっぽんせいふ関税かんぜいおさめます。輸入者ゆにゅうしゃはらった関税かんぜい最終的さいしゅうてきに、消費者しょうひしゃとき支払しはら商品価格しょうひんかかくにプラスされます。

 その役割やくわりには、▽税収ぜいしゅうくに財源ざいげんにする▽国内産業こくないさんぎょう保護ほご相手国あいてこく貿易ぼうえき損害そんがいしょうじさせた場合ばあい制裁機能せいさいきのう――があります。

 国内産業こくないさんぎょう保護ほごとは、関税かんぜいをかけることで輸入品ゆにゅうひん価格かかくがるため、それらにたいする価格競争かかくきょうそう国産品こくさんひん有利ゆうりにできることです。たとえば、日本政府にっぽんせいふ輸入牛肉ゆにゅうぎゅうにくに38.5%の関税かんぜいをかけて、国産牛肉こくさんぎゅうにくまもっています。コメについては無関税むかんぜい輸入ゆにゅうしますが、民間事業者みんかんじぎょうしゃによる輸入ゆにゅうには1キログラムたり341えん関税かんぜいがかかる独自どくじルールをもうけています。

 一方いっぽう制裁機能せいさいきのうとは、商品しょうひん国内こくないよりもひく価格かかく輸出ゆしゅつする不当廉売ふとうれんばい(ダンピング)をしたり、輸出ゆしゅつやすため企業きぎょう補助金ほじょきんして輸入国ゆにゅうこく産業さんぎょう損害そんがいあたえたりするくにたいし、たか関税かんぜいをかけてこらしめることです。

むかし戦争せんそうにつながったことが?

 世界的せかいてき不況ふきょう世界恐慌せかいきょうこう」がきていた1930ねん、アメリカは自国産業じこくさんぎょうまもろうと、輸入品ゆにゅうひんたか関税かんぜいをかける法律ほうりつつくりました。これを保護主義政策ほごしゅぎせいさくといいます。

 イギリスやフランスも、アメリカなどに対抗たいこうして高関税こうかんぜいをかけました。また主要国しゅようこくは、植民地しょくみんち領土りょうどあいだ関税かんぜいげる一方いっぽう、その地域以外ちいきいがいにはたか関税かんぜいをかける「ブロック経済圏けいざいけん」をつくっていきました。このため世界せかい自由貿易じゆうぼうえきさまたげられ、主要しゅよう75かこく総輸入そうゆにゅうは4割以下わりいかにまでったといいます(経済産業省けいざいさんぎょうしょう通商白書つうしょうはくしょ2019」から)。そして世界的せかいてき不況ふきょう長引ながびいて各国かっこく政治的せいじてき経済的けいざいてき対立たいりつつよまり、第二次世界大戦だいにじせかいたいせんきた理由りゆうひとつになったともいわれます。

 その反省はんせいから、戦後せんごの1947ねんまれたのが、貿易ぼうえき自由化じゆうかすすめる関税貿易一般協定かんぜいぼうえきいっぱんきょうていGATTガット)です。その95ねんに、各国間かっこくかん貿易紛争ぼうえきふんそう解決かいけつする機能きのうそなえた世界貿易機関せかいぼうえききかん(WTO)にがれました。

 トランプ大統領だいとうりょう関税かんぜい武器ぶき」 ねらいは?

 アメリカのトランプ大統領だいとうりょうは、輸入額ゆにゅうがく輸出額ゆしゅつがく上回うわまわ貿易赤字ぼうえきあかじが「アメリカの産業さんぎょういためつけ、雇用こよううばっている」と主張しゅちょうしています。関税かんぜいを、▽アメリカの製造業せいぞうぎょう復活ふっかつ▽2国間交渉こくかんこうしょう取引材料とりひきざいりょうにする▽国家こっか収入増加しゅうにゅうぞうか――というみっつの目標もくひょう同時どうじにかなえる「万能薬ばんのうやく」とかんがえているようです。

 トランプさんは「適切てきせつ使つかえば、関税かんぜい非常ひじょう強力きょうりょく武器ぶきだ。経済問題以外けいざいもんだいいがいのことでも成果せいかられる」とはなし、1がつ大統領就任直後だいとうりょうしゅうにんちょくごからメキシコとカナダに不法移民ふほういみん麻薬密輸対策まやくみつゆたいさく要求ようきゅう。また中国ちゅうごくたいしても麻薬流入対策まやくりゅうにゅうたいさく不十分ふじゅうぶんだとして、これら3かこくに、もともとかけている関税かんぜいにプラスする「追加関税ついかかんぜい」をかけました。

 また、「高関税こうかんぜいいやならアメリカに工場移転こうじょういてんを」と主張しゅちょうし、すべてのくにから輸入ゆにゅうされる鉄鋼てっこう自動車じどうしゃなどに25%の追加関税ついかかんぜいをかけました。さらに全世界ぜんせかい一律いちりつ10%の関税かんぜいをかけ、貿易赤字ぼうえきあかじ相手国あいてこく地域ちいきには「相互関税そうごかんぜい」を発表はっぴょうしました。相互関税そうごかんぜい最大さいだい50%(日本にっぽんには24%)までプラスする内容ないようです。

日産自動車九州苅田工場に隣接する港湾エリアに並ぶ、完成した自動車。奥に見えるのは輸出車の運搬船=福岡県苅田町で4月10日

 「トランプ関税かんぜい」の影響えいきょうは?

 トランプ政権せいけん関税強化かんぜいきょうか世界経済せかいけいざい先行さきゆきが不安ふあんになり、世界中せかいじゅう株価かぶか下落げらくしました。25%の自動車関税じどうしゃかんぜい発表はっぴょうされたときは、アメリカ大手自動車おおてじどうしゃしゃ株価かぶか下落げらくしました。カナダとメキシコにも工場こうじょうがあるため影響えいきょう心配しんぱいされることや、輸入部品ゆにゅうぶひん値上ねあがりによって自動車価格じどうしゃかかくげるとれなくなるおそれがあるからです。

 また相互関税そうごかんぜい強行きょうこうした4月9日がつここのか市場しじょうでは国債こくさいくに借金しゃっきんのため発行はっこうする)、アメリカドル、株式かぶしき同時どうじられる「トリプルやす」がきました。このためトランプ政権せいけん相互関税そうごかんぜいを90日間停止にちかんていししました。国内こくないでは、物価上昇ぶっかじょうしょう(インフレ)がふたたきるとの見方みかたもあります。アメリカはやす日用品にちようひんをたくさん輸入ゆにゅうしていますが、たか関税かんぜいがかけられれば、みせ商品しょうひん値上ねあげせざるをないからです。

 一方いっぽうこまった各国かっこく関税かんぜいらしてもらおうとアメリカとはないをはじめ、日本にっぽん赤沢亮正あかざわりょうせい経済再生担当大臣けいざいさいせいたんとうだいじん交渉こうしょうにあたっています。すべての関税見直かんぜいみなおしをもとめていますが、アメリカがおうじる見通みとおしはっていません。

トランプ政権の対日関税引き上げを巡る2回目の交渉で、協議前に握手する日本の赤沢亮正経済再生担当大臣(右)とベッセント・アメリカ財務長官ら=アメリカ・ワシントンで(代表撮影)

自由貿易じゆうぼうえき、これからどうなる?

 アメリカは戦後せんご国際協調こくさいきょうちょうのために自由貿易じゆうぼうえきすすめ、経済けいざい成長せいちょうしてきました。一方いっぽう、トランプさんはだい次政権時代じせいけんじだいから、関税かんぜいによる保護主義政策ほごしゅぎせいさく方針ほうしんえました。背景はいけいには貿易赤字ぼうえきあかじかかえてきたことや、やす海外製品かいがいせいひんにより製造業せいぞうぎょうおとろえたことがあります。ただ、それは各国かっこくおなじで、保護ほごしたい国内産業こくないさんぎょうがあります。またWTOが、とく中国ちゅうごく不公正ふこうせい貿易慣行ぼうえきかんこう有効策ゆうこうさくてていないなどの課題かだいてきました。

 そんななか日本にっぽんは12かこく自由貿易圏じゆうぼうえきけんをつくる「包括的及ほうかつてきおよ先進的せんしんてき環太平洋かんたいへいようパートナーシップ協定きょうてい(CPTPP)」などで役割やくわりたしています。交渉こうしょうからアメリカは離脱りだつし、中国ちゅうごく加盟かめいしていませんが、保護主義ほごしゅぎながれに歯止はどめをかけることが期待きたいされます。トランプさんにたいし、多国間たこくかん協力枠組きょうりょくわくぐみをまもることが重要じゅうようだとかんがえられています。

(2025ねんがつ21にち 毎日小学生新聞まいにちしょうがくせいしんぶんより)

雑誌のご購入ご希望の方は「ブックサービス」まで

上のバナーをクリックすると「ブックサービス」につながります。