縄文人はスーパースター!?【月刊Newsがわかる11月号】

国際刑事裁判所へ 強まる圧力

 戦争犯罪を犯した個人を裁く国際刑事裁判所(ICC、本部=オランダ・ハーグ)に対し、アメリカが圧力を強めています。アメリカ政府は8月、ICCが国家の主権を脅かしているとして、所長の赤根智子さんを制裁(こらしめ)対象に加えると発表しました。なぜでしょうか?(「Newsがわかる2026年11月号」より)

 ICC ってどんな組織?

 ICCは、戦争の中で多くの人を殺したり、市民に対してひどい行いをしたり、戦争のルールを犯した指導者ら個人を裁く国際的な裁判所です。冷戦が終わった後、民族同士の争いが多発したことをきっかけに、2002年に設立されました。戦争被害者にとっては最後のとりでともいえる存在です。国際的な正義に貢献してきたなどとしてノーベル平和賞の候補にもたびたび挙がっています。
 日本を含む120超の国・地域が加盟していますが、アメリカやロシアなどは非加盟です。

 国を裁くのは国際司法裁判所   ICCと同じ国際裁判所としてよく知られているのが、国際司法裁判所(ICJ)です。ICCと同じオランダ・ハーグに本部を置きますが、個人ではなく、国同士の争いを解決するという役割の違いがあります。1945年に国連の司法機関として設立されました。

国際司法裁判所(ICJ)

アメリカはアメリカの兵士や指導者が外国で裁かれることに反対して加盟していないそうなんだ

 どうして制裁されたの?

 ICCが2024年、イスラエルのネタニヤフ首相に対し、パレスチナ自治区ガザ地区での戦争犯罪などの容疑で逮捕状を出したことに、イスラエルと関係の深いアメリカのトランプ政権が反発したことが始まりです。トランプさんは2025年2月、ICC職員にアメリカへの渡航禁止や、アメリカ国内の資産凍結ができる大統領令に署名し、関係者を次々と制裁対象としてきました。
 8月18日にはトップの赤根さんを制裁対象とし、アメリカ国内の資産凍結や入国禁止を発表しました。
 アメリカはICCを弱らせようと、加盟国に脱退を働きかけており、7月にはベネズエラやチャドが脱退する考えを表明しました。

破壊されたガザ北部の街の様子=イスラエル南部スデロットで2024年4月11日
 「法による支配」守れるか

 赤根さんは検事を経て、2018年にICCの判事に就任し、2024年に日本人として初めてICCの所長に就任しました。
 赤根さんは8月26日、オンライン記者会見で「制裁を受ける理由は全くない」と強調。「ICCは決して負けない。正義は常にこれと対極にあるものに優越するという信念を貫く」と、今後も裁判を続ける考えを示しました。
 アメリカがICCの解体に触れている点については「力のある国が力の支配という形で、法の支配を駆逐していく過程に入ってしまう」と危機感を訴えました。法の支配とは、国の強さに関係なく、すべての国が共通のルールに従うべきだという考え方です。赤根さんは、強い国の考えが優先されれば、その考え方が弱まることを心配しているのです。

国際刑事裁判所の赤根智子所長=大阪市内で7月27日
 ヨーロッパはICCを支持

 赤根さんへのアメリカの制裁を受け、ヨーロッパではICCとの協力を表明する声が広がっています。欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は「断固支持する」とX(ツイッター)に投稿。「世界で最も凄惨な犯罪の被害者に正義をもたらすことに役立っている」と指摘しました。ICCの本部があるオランダのベーレンドセン外務大臣もXで、赤根さんらへの制裁にオランダとして「反対する」と表明しました。フランスやドイツもICCを支持する考えを示しています。

 日本政府の対応に批判も

 高市早苗首相は制裁が発表された直後の8月19日に「大変残念」などとコメントしましたが、同盟国であるアメリカへの配慮が目立ちました。この姿勢に対し、国内外からは「弱腰だ」との批判が出ていました。
 その後、高市さんは8月25日に「日本の立場と相いれるものではなく、大変深刻に受け止めている」と発言し、改めて危機感を示しました。
 赤根さんはオンライン会見で「心から感謝している。日本は法の支配を外交関係の柱に据えてきた国で、世界の期待は大きい」と述べ、日本の支援へ期待を示しました。

ICCの赤根智子所長が米政府から制裁対象とされてい
ることについて、対応を説明する高市早苗首相首相=首相官邸で8月25日

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