東京オリンピック(五輪)から3年。いよいよ7月26日(日本時間では27日午前2時半)に、フランス・パリ五輪の開会式を迎えます。日本選手団は、約400人の選手団になる見込みで、海外で開かれる五輪としては史上最多となっています。日本オリンピック委員会(JOC)は、金メダル20個を目標にしています。パリ五輪を楽しみにしている知りたいんジャーたちが、見どころを調べました。【武本亮子】
◇主な競技会場は?
今大会は32競技329種目が行われます。開会式前の24日からサッカー、ラグビー7人制などが始まり、開会式の翌日から競技が本格的にスタートします。
競技会場は、観光名所が多く利用され、エッフェル塔はビーチバレーの特設会場になります。ベルサイユ宮殿では馬術や近代五種が行われ、コンコルド広場ではブレイキンを含むアーバン(都市型)スポーツが大会を盛り上げます。テニスの全フランスオープンでおなじみのローランギャロスでは、テニスとボクシング、フランス領ポリネシアのタヒチではサーフィンが行われます。1924年のパリ大会のメインスタジアムでは、ホッケーを実施します。陸上や閉会式が行われるメインスタジアムとなるのは、フランスの国立競技場「スタッド・ド・フランス」です。選手村もこの近くにあります。
◇開会式はセーヌ川でやるの?
パリ五輪の開会式は、パリ市の中心部を流れるセーヌ川で行われます。夏の五輪の開会式が、スタジアムの外で行われることも、水上で行われることも初めてです。選手たちのパレードから始まる珍しい演出で、その選手たちもボートに乗って登場します。
沿岸にはノートルダム大聖堂やルーブル美術館などもあり、選手の様子といっしょに景色も楽しめそうです。エッフェル塔近くのイエナ橋に到着した後、選手は近くのトロカデロ広場へ移動し、セレモニーを見ます。セーヌ川沿いには、巨大スクリーンなどが設置され、開会式を盛り上げる予定です。川沿いに集まる観客は数十万人になると見られています。日本選手団の旗手は、フェンシング女子の江村美咲選手(25)とブレイキン男子の半井重幸選手(22)が務めます。
パリ五輪日本選手団の結団式で団旗を受け取ったフェンシングの江村美咲(左)とブレイキンの半井重幸
◇夏と冬に大会があるの?
古代五輪が開かれなくなってから1500年近くたった1896年、五輪が復活しました。フランスの貴族で教育者だったピエール・ド・クーベルタンが、スポーツを通して国際交流や世界の平和を実現させようと、開催を提案したことがきっかけでした。
一方、冬の五輪の始まりは1924年にフランスで行われたシャモニー・モンブラン大会。フィギュアスケートなどが夏の五輪に組み込まれるようになり、試験的に冬の競技だけで開かれた大会で、のちに五輪として認められました。以来、夏と冬の五輪は同じ年に開催されていました。
86年、国際オリンピック委員会(IOC)が総会で「五輪の人気を高める」などの理由から、夏と冬の大会を2年ごとに開催すると決めました。92年が最後の同年開催で、94年にリレハンメル冬季大会のみが開かれた後は、2年ごとに夏と冬の五輪が開かれています。
◇注目している選手はいる?
陸上女子やり投げの北口榛花選手(26)は、特に注目されています。北口選手は、肩の強さと柔らかさを生かした、179㌢㍍の長身から繰り出される力強い投てきが魅力です。2023年8月にハンガリーであった陸上の世界選手権で、66㍍73㌢㍍を投げて優勝し、早々と五輪代表に決まりました。
女子やり投げ予選、北口榛花の1回目の投てき=陸上の世界選手権(世界陸上) ハンガリー・ブダペスト
この金メダルは、日本女子選手としては五輪、世界選手権を通じて初めてとなるフィールド種目での金メダルでした。北口選手が金メダルを獲得すれば、フィールド種目の日本女子選手としては五輪初となります。少し広げて陸上競技場内で行われる種目(トラック&フィールド種目)という観点で見てみると、過去に日本女子選手がメダルをとったのは1928年アムステルダム五輪女子800㍍銀メダルの人見絹枝選手です。北口選手がメダルをとると、実に96年ぶりとなります。
◇新競技はあるの?
今大会の新競技は、ブレイキンです。「ブレイクダンス」と呼ばれることもある、ダンス競技です。発祥は1970年代のアメリカ・ニューヨークです。貧しい地区で争いが頻発していたため、そのエネルギーをダンスという形でぶつけあうことで対決する「ストリートダンス」として生まれました。
逆さになって頭でくるくる回る「ヘッドスピン」や背中や肩で回転する「ウインドミル」などのダイナミックな「パワームーブ」、逆立ちや頭やひじで体を支え、ピタッと静止する「フリーズ」など、高度な技をどんなふうに組み合わせるのかが見どころです。
ブレイキン世界選手権男子3回戦、演技する半井重幸=北九州市の西日本総合展示場で
パリ五輪では男女それぞれ16人ずつが出場し、1対1で対決します。審査員は技術や、技の完成度、独創性などを採点します。28年のロサンゼルス五輪では行われないため、今大会を見逃さないようにしましょう。(2024年07月24日毎日小学生新聞より)