フィジカルAIがひらく未来【月刊Newsがわかる8月号】

スクールエコノミスト2026 WEB【東邦大学付属東邦中学校編】

スクール・エコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は東邦大学付属東邦中学校を紹介。

授業に勝るとも劣らない教育効果。部活動で逞しく成長する子どもたち

<注目ポイント>
①学校生活のすべてを学びの場とし、生徒と教員がともに学ぼうとする校風。
②時代の空気を感じる歴史的意義のある作品も生み出した地形模型部。
③基礎の反復と時間を含めた自己管理が人間教育に繋がる水泳部。

部活も重視する中高6年間は「自分探しの旅」

 司馬遼太郎『坂の上の雲』の主人公・秋山好古ゆかりの習志野騎兵連隊司令部跡地にキャンパスが広がる東邦大学付属東邦中学校。中高6年間の学校生活は「自分探しの旅」、学業だけでなく課外活動も重要な学びの場とする校風を体現している部活動のうち、代表して2つの部を紹介したい。

 まずは「生徒の個性と向き合いながら、ひとつひとつの活動を積み重ねていくことで6年間通ってよかったと共感してもらえる学校が東邦大東邦です」と述べる地形模型部顧問の飯島崇教諭からお話しを伺った。

熱血教員が生み出したユニークな地形模型部

 男女合わせて約20名の部員が所属する地形模型部。精密な地図の等高線に沿って切り出したボール紙を慎重に積み重ね、地形の模型(ジオラマ)を制作するという部活は全国でも珍しい。他校との競い合いがない分野なので、自分たちで目標を定めてそれを超えていくことになる。1年生はまず小さな島の制作を通じて「等高線をなぞる」「彫り抜く」「貼り重ねる」という基本技術を習得したうえで、文化祭に出す作品の比較的簡単な部分を担当し達成感を得る。経験を積んだ2年生は難しい部分を任され、3年生になると最も高難度の地形を担当する。

 活動を通じて育つ非認知能力は大きく分けて2つある、と顧問を務める国語科の飯島崇教諭はいう。「1つめは丁寧さと注意力。等高線を正確になぞる作業は、手を抜くと作品に正直に現れるのでごまかしが利きません。2つめは計画性と粘り強さ。長丁場となる工程を俯瞰し、完成までの道筋を設定し、完遂する力が養われます。受験など長期的な目標の達成にも通じるところがありますね」

 加えて無視できないのが、「居場所」としての機能だと飯島教諭は続ける。「例えばコミュニケーションが苦手な生徒でも、黙々と作業に打ち込むことで作品を通じて互いを認め合う。校内での“居場所”を見つけるきっかけとなっており、実際生徒からそのような声を聞いています」

 また第一号作品『黒部峡谷』以来、文化祭で注目を浴びている作品実績には時代の空気を映すものが多く、なかでも印象的なのは、北方領土返還交渉が盛り上がっていた頃の『国後島(縮尺:1/50000)』や、これを超える作品をという思いで取り組まれた同縮尺の『択捉島』だ。後者はまさかの“5年”がかりのプロジェクトとなり、始めた先輩たちの思いを継いだ後輩たちが完成させた。緻密な地形を長さ4m、幅1mで再現した逸品は、巨大さ故に展示場所を選ぶことを生徒らは学び、完成後の維持や保管までを見通す計画性を身につけるきっかけともなった。

 地理の授業の教材として、1人の地理教員の高い熱量から始まったこの活動は、歴代部員たちが日々挑み続けた等高線とともに50年の歴史を積み重ねている。地形を立体に起こすことで土地への理解が深まり地理が好きになる。「大学はおろかその先の仕事選びにまで繋がっている生徒が何年かに1人います。社会の中に“居場所”を見つける確かな力になっているのです」と飯島崇教諭は目を細める。

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