スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は東京農業大学第一高等学校中等部を紹介します。

学び・仲間・新校舎の融合が加速させる。体験▶驚き▶知の深化 という循環
<注目ポイント>
①教育理念の「知耕実学」は、本物に触れる体験から知を耕す学び。
②完全中高一貫校化と新校舎の完成で生徒間の学び合いが深まる。
③「 一中一高ゼミ」と「課題研究」との連動で大学進学へとつなげる。
体験で得た驚きを出発点に知を耕す
東京農業大学第一高等学校中等部は、教育理念として「知耕実学」を掲げている。入試広報部部長の赤井郷巳教諭は、「知耕実学とは、ひとことで言えば驚きから知を耕す教育です。本校の授業は本物に触れ、とにかくやってみることから始まります」と語る。
たとえば、中1の生物の授業では、各自ひとつの豚の目を使い水晶体を取り出す本格的な豚の眼球解剖や、メダカの稚魚のDNAを鑑定して雌雄を判別するなど、授業の半分ほどを実験が占めている。
社会科では、実際の選挙広報を使い候補者マニフェストを収集。本物の投票箱を使って模擬選挙を実施し公正な運営を検証する。
また、校内の雑木林で樹木・植生調査を行い、クワガタを採集して多様性を研究するなど、東京でありながら自然に恵まれた環境を生かした学びも実践されている。
東京農業大学の施設や教授陣と直結した「本物の研究体験」ができるのも併設校ならではの強み。中1で田植えから脱穀まで米作りに携わる稲作体験、中2で作ったお米のおいしさを科学的に検証、中3では大学の無菌室で味噌作りに挑戦する。2024年から希望者は、高校生のうちから併設大学の単位に認定される特別講義もスタートした。
「知耕実学において、体験はあくまで入口。そこから『なぜ?』という問いが生まれ、考察を重ねることで知恵を深めていくことに注力しています」と赤井教諭はいう。

稲作体験は田植えから収穫を体験し中2のお米の研究へつなげる
完全中高一貫化で生まれた化学反応
2025年度より完全中高一貫校となったことで、併設の稲花小学校からの内進生と中学受験組の混合クラスとなり、多様な個性が刺激し合って化学反応が生まれている。
英語が得意な内進生と数学が得意な中学受験組が自然と教え合っている。また、探究活動では先輩が後輩にアドバイスをしたりするなど、学年を超えた共創(共に創る)の文化も根付いている。
2023年に完成した新校舎2号館は、美術室や書道室、技術室、家庭科室といった実技教室を集約。廊下には生徒の作品が展示され、ラウンジには自由に弾けるピアノが置かれるなど、生徒の感性と自由な発想を刺激する創造力育成の場となっている。同フロアにある自習室では、放課後、難関大学に通う卒業生がチューターとして生徒たちの質問に答えている。2026年10月には図書室や理科実験室、ホールなどを備えた3号館が完成予定。活動の場がさらに広がる。
- 1
- 2