領土って何だろう【月刊Newsがわかる6月号】

スクールエコノミスト2026 WEB【普連土学園中学校編】

スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は普連土学園中学校を紹介します。

大学とのユニークな研究連携が広がる、日本で唯一のフレンド派の学校

<注目ポイント>
①「自由・平等・対話・平和主義」を基軸とする全人教育。
②中学校舎の建設由来の縁で始まった法政大学との中高大連携教育。
③イギリス、カンボジア、アメリカでのオリジナル海外研修。

自然発生的な中高大連携教育

 『武士道』の著者で国際連盟事務次長も務めた新渡戸稲造と近代日本を代表する思想家内村鑑三がアメリカに留学中、キリスト教フレンド派の人々に進言し、女子教育を目的として創立された普連土学園。フレンド派は歴史的平和教会の一つであり、様々な平和運動や奉仕活動に従事してきた。1947年にはそれらの活動の功績が認められ、アメリカ・フレンズ奉仕団とイギリス・フレンズ協議会がノーベル平和賞を受賞している。同校は、フレンド派の創始者であるジョージ・フォックスの言葉“Let Your Lives Speak.(自らの生き方をもって語りなさい)”をモットーに「自由・平等・対話・平和主義」を基軸とした教育を行っている。

 毎朝の礼拝にもフレンド派らしさがある。中でも毎週水曜日は言葉を発することなく過ごす「沈黙の礼拝」で静かに自己と向き合う。キリスト教で重んじられる教義の一つである三位一体論でいう〈聖霊〉を、フレンド派では〈内なる光〉と言い換えている。同校の青木直人校長は語る。「〈内なる光〉は一人ひとりの中に内在しており、教会という権威を通さずとも、神様は各人に直接語りかけている。それを聴くために〈沈黙〉を大切にしており、フレンド派の信仰の本質でもあります」。このことは、自己主張よりもまずは他者の声に耳を傾ける姿勢を育む同校の教育の特色としても表れている。

 ほかにも、礼拝では生徒や教員が自由なテーマで考えていること、感じていることを話す場面がある。「他者の話を聞いて多様な考え方に触れ、そこから気づきを得る。自分の世界が広がっていく。これこそが学びの原点だと考えています」と、青木校長は言う。

 内面的な価値観のあり方は校舎の佇まいにも表れている。法政大学建築学科の礎を築いた昭和の名建築家・大江宏氏が手掛けた中学校舎はバルコニーが明るく開放的であるのに対し、室内は外光を抑えた落ち着いた空間となっている。これは大江氏が南ヨーロッパやパレスチナを旅した際に触れた南欧、とくにスペインの建築様式から着想を得たものだ。広報部長の池田雄史教諭は語る。「大江氏はキリスト教学校である本校の設計をするにあたり、聖書を読んだようです。中でもフレンド派が大切にした『ヨハネによる福音書』の『光は闇の中で輝いている。闇は光に勝たなかった』という一節とスペインでの体験が結び付き、暗さと明るさの対比の中から心の動きや落ち着きが生まれるというデザインコンセプトを導いたといわれています」

 同校と大江氏の縁から2023年には法政大学との高大連携が始まった。同大学建築学科の小堀哲夫研究室が進める「大江プロジェクト」に中高18名の生徒が参加し、大学生と共に中学校舎の実測調査を行った。その後も活動は広がり、都内にある大江建築のフィールド調査に参画。3年間で約50名の生徒が大学レベルの事例研究に携わり、同校の教育の新たな柱として定着しつつある。

昭和の名建築家・大江宏氏の設計による中学校舎

海外研修でも大学教授からレクチャー

 法政大学との連携は海外の住環境に関する学習にも広がる。カンボジアで地雷撤去活動を行うアキラー氏(カンボジア政府認可NGO団体・CSHD)を支援する献金を行ってきた同校は現地に直接献金を届ける異文化交流研修「カンボジア アキラー プロジェクト」を行っているが、研修中に東南アジア最大の湖であるトンレサップ湖畔の高床式住居を訪れた際、同大学建築学科で住環境の研究を行っている加用現空教授と現地をオンラインでつなげ、リアルタイムでレクチャーを受けた。雨季と乾季の水位変化が住宅に及ぼす影響、気候と生活文化に適応した建築の形などを実地で学び、単なる海外理解ではなく、環境と建築の相互関係を捉える視点が育まれた。

 この異文化交流研修では、第1回に参加した生徒の希望から東京農業大学土壌学研究室との連携も生まれた。研究室を訪問し、カンボジアの農村の土壌汚染対策、水耕栽培の導入の可能性、土地の地力回復などの課題について、専門性の高い学びを得た。

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