これまで水泳の授業といえば学校のプールに入るのが当たり前でした。最近は、校外のプールを使う学校もめずらしくなくなってきました。
小学校の体育の授業で水泳をすることになっているのはどうしてでしょうか。国の役所のスポーツ庁に聞いてみました。
水の中では体をうかせるなど、陸の上とはちがう環境で体を動かす楽しさを味わうことができます。また、こうした全身を使った運動を通して筋力、持久力を高め、体を巧みに動かせるようになることに加え、体の成長にもよい効果を期待できる面があります。
しかも日本は川や池、沼、湖が多く、海に囲まれ水に恵まれた国です。その分、水辺での事故も後を絶たず、水泳を学ぶことは、命を守ることにつながります。
こうした考えから、学校で学ぶ内容を国が定めた学習指導要領に1968年、小学校から中学校までの体育の授業で必ず学ぶこととして水泳に関する運動が明確に位置づけられました。どの学校でも学ぶこととなっています。

水泳の授業では、水難事故から命を守るため、服を着たまま泳ぐ「着衣水泳」も指導されている
日本は全小学校の約9割にプールが備わっています。これほど学校にプールがある国は世界でもめずらしいといわれています。
香川県高松市沖で1955年、修学旅行中の小中学生が乗った連絡船「紫雲丸」が沈没し168人が犠牲になりました。この事故をきっかけに、学校で水泳を学べるプールを整備してほしいという声が高まりました。
さらに1961年、学校のプール整備に国から補助金が出るスポーツ振興法(いまのスポーツ基本法)が制定されました。1960~1970年代に各地の学校でプールがたくさん造られていきました。
造ってから50年以上たち、老朽化(古くてこわれやすくなること)したプールがたくさんあるのは、そのためです。プールの耐用年数(もちこたえられる期間)は30~50年くらいといわれており、こうした古いプールのある学校では、プールを建て替えるかどうかを決めなければいけない時期になっています。
古くなったプールを建て替えるには、1億5000万~3億円くらいのお金がかかるといわれています。さらに水道代や、水質を検査したり薬品を入れたりする水質管理費、ろ過器の点検代など、維持や管理にも毎年200万円前後のお金が必要になるそうです。
また、学校でプールのそうじをしたり、水道水を入れたり、授業前に水がきれいかどうかの水質を検査したり、水をきれいにする薬品を入れたりする必要があります。先生であれ、外部のスタッフの方であれ、維持するには手間がかかります。
一方で、子どもの数は少なくなり、将来はクラスが減ったり学校がなくなったりするかもしれません。たくさんのお金をかけて改めてプールを整備するよりは、学校の外にあるプールをうまく活用してはどうか――という考えが生まれてきました。
地球温暖化もこうした議論に大きな影響を与えています。気温が35度以上の猛暑日が増え、水につかる授業とはいえ、熱中症になる危険は陸上での運動と同じく増えているのです。学校のプールが太陽の照りつける屋外であれば、熱中症のおそれがあるほどの暑い日は授業を中止せざるをえません。
また、屋外にあるプールでは雨の日に水温が低くなったり雷の危険があったりして授業が中止になることもあり、十分な授業時間が確保できないのではないか、と心配する声もあります。
水泳は、ういたり息つぎをうまくしたりと、実際に水に入らないと分からないことが多い運動です。例えば、屋内の温水プールを備えている地域のスイミングスクールなら、天候に左右されずに授業ができます。こうしたこともあり、地域の施設をうまく使って計画的に授業を実施する工夫が各地で見られるようになってきたのです。
日本水泳連盟は、こうした先生たちのなやみに答えようと電話相談「学校水泳授業相談ダイヤル」を設けています。相談の多くは、施設の確保や児童・生徒の移動方法など、校外プールの利用についてだそうです。
全国各地で校外プールの利用校が増え、東京都福生市は、今年度から全小中学校がスイミングスクールで授業をすることになりました。学校のプールではないので、夏の時期に全員が入れず、冬に授業をすることもあります。福生市教育委員会によると、学校の先生に加え、専門のインストラクターが指導するので、学校のプールよりたくさんの大人が見守るメリットもあるそうです。
日本水泳連盟は、今後は民間のスクールのほか、複数の学校で拠点校のプールを共同利用したり、公営プールを利用したりするやり方が増えていくとみています。水泳の授業は校外へお出かけで――という日が当たり前になってくるかもしれませんね。
(2026年5月27日毎日小学生新聞より)
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