アメリカとイスラエルが、中東にあるイランを攻撃しました。原油の出荷などがとどこおってしまい、影響が世界に広がっています。イランはどんな国なのでしょうか? なぜ戦いが起きたのでしょうか? 日本との関わりも交え、歴史と現状をおさえてみましょう。
イランは古代に「ペルシャ」と呼ばれ、紀元前6世紀にできたアケメネス朝、3世紀にできたササン朝などで、大きな帝国として栄えました。7世紀にアラビア半島でイスラム教ができると、ペルシャにも広がりました。
世界のイスラム教徒のうち9割ほどがスンニ派ですが、イランは9割ほどがシーア派です。預言者ムハンマドの後継者について、スンニ派は話し合いで決めるべきだと考え、シーア派は血筋を重んじます。
1979年には、それまで独裁政治をしていたパーレビ国王に国民が反発して王制をたおす革命が起きました。シーア派の宗教指導者・ホメイニ師が最高指導者となり、シーア派の教えに基づく仕組みに変わりました。正規軍とは別の軍事組織として「革命防衛隊」があります。女性にはヘジャブ(髪をおおうスカーフ)の着用を義務づけるなど、保守的な文化が色濃く残っています。
石油や天然ガスなどの資源に恵まれ、世界有数の埋蔵量をほこっています。ペルシャじゅうたんは、美しいもようが織り込まれた伝統工芸品です。
革命前のイランは、パーレビ国王がアメリカを後ろ盾にしていて友好的でした。アメリカに石油を売る代わりに戦闘機などの武器を大量に買い、国王に近い人や都市部の住民は豊かになりました。一方、地方や貧しい人は取り残され、不満がたまっていました。
1979年に革命が起きると、ホメイニ師を支持する学生らが首都テヘランのアメリカ大使館を占拠し、外交官ら52人を人質にしました。事件は解決までに444日かかり、1980年にイランとアメリカは国交を断ちました。イラクがイランの石油を目当てに攻め入って始まった1980年代のイラン・イラク戦争では、アメリカがイラクを支援しました。
2001年9月11日にアメリカ同時多発テロが起きた後は、当時のブッシュ(子)大統領がイラン、イラク、北朝鮮の3か国を「悪の枢軸」と呼んで敵視を強めました。
「ペルシャ」と呼ばれた現在のイランの地域と日本は、古くから交流の歴史があります。奈良・平安時代の天皇ゆかりの宝物を納めた「正倉院」(奈良市)には、シルクロードを通じてペルシャにゆかりのあるガラスの器やお面が伝わっています。奈良市の平城宮跡からは、ペルシャ人の役人とみられる名前を書いた木簡(細長い木の板)が見つかっています。京都三大祭りの一つ「祇園祭」では、山鉾のかざりとしてペルシャじゅうたんが使われてきました。
1953年には、出光興産のタンカー「日章丸」がイランで石油製品を買い付けて輸入しました。当時は、イランが石油の国有化を宣言し、イギリスの反対で多くの国がイランからの輸入をひかえていただけに、イラン側が日本に親しみを持った出来事として語り継がれています。日本がバブル景気にわいた1990年前後には、イランから数万人の労働者が仕事を求めて来日しました。
イランの外務大臣のアラグチさんは、2008年から約4年間にわたって駐日大使を務め、名前を漢字にした書いた「新久地」の名刺を持ち歩いていました。
アメリカとイスラエルは、イランが「核兵器を製造するのではないか」と疑い、攻撃した主な理由にしています。アメリカは核保有国で、イスラエルも核兵器を持っているとされているのですが、イランが核兵器を持ち始めると、特にイスラエルの安全がおびやかされるというわけです。
イランは1985年ごろ、ひそかに核開発を始め、ウランを濃縮する施設を建てました。2002年にその秘密が明るみに出て、イランが「平和目的だ」と説明しても核兵器製造への疑いが晴れてきませんでした。
2015年にはアメリカやヨーロッパなど6か国とイランが核合意を結びます。イラン側が核開発で一定の制限を受ける代わりに、経済制裁をゆるめる内容でした。ところが、2017年に就任したアメリカのトランプ大統領が一方的に合意から離れ、イラン側も「約束がちがう」として核開発を進めました。また、イランは、ユダヤ人の国であるイスラエルを国家として認めず、パレスチナを占領することを非難してきました。レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラなどを支援し、「抵抗の枢軸」と呼ばれるネットワークをつくり、イスラエルと激しく対立してきました。
2025年にトランプさんが再び大統領になると、この年6月にイスラエルとアメリカがイランの核施設を攻撃しました。アメリカとイランが改めて核開発をめぐる話し合いを続けていた今年2月28日、アメリカはイスラエルとともに大がかりな攻撃にふみ切りました。

イスラエルのネタニヤフ首相
今回の攻撃で、イランでは最高指導者のアリ・ハメネイ師ら多くの要人が殺害されました。市民をふくむ3000人以上が死亡したと報じられています。新しい最高指導者には、アリ・ハメネイ師の次男のモジタバ・ハメネイ師が選ばれました。
イランは、ホルムズ海峡で船の行き来を禁止して封鎖しました。日本はガソリンなどの材料となる原油の9割以上を中東地域から輸入しています。そのほとんどがホルムズ海峡を通って運ぶ必要があり、原油の輸入がほぼ止まってしまいました。世界的に原油が値上がりしています。
アメリカとイランは7日、2週間の停戦に合意しました。戦いを終わらせるために11~12日にパキスタンで話し合いましたが、もの別れに終わりました。これを受けて、トランプさんは、アメリカ軍によるホルムズ海峡の「逆封鎖」に乗り出しました。ホルムズ海峡は本来、国際条約で自由な行き来が認められていますが、武力によって支配権が争われ、緊張が続いています。
(2026年4月22日毎日小学生新聞より)
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