千客万来ニッポン どう考える?【月刊Newsがわかる7月号】

スクールエコノミスト2026 WEB【巣鴨中学校編】

スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は巣鴨中学校を紹介します。

社会変革を起こす学びと人との出会いが、知識と社会をつなげ、高い目標を導く

<注目ポイント>
①ハーバードやMITでの哲学的対話が社会変革の力を養う。
②巣鴨OBや研究者との出会いが生徒の羅針盤となる。
③伝統と未来の創造が交差する町で議論を交わし、正解なき問いと向き合う。

ボストンで社会変革を起こす学びを体感

 “真の国際人”を育成する独自の国際プログラムを提供し続ける巣鴨学園。高校生35名が参加した「ボストン研修」もその一つだ。ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)の学生たちとの議論、最前線で活躍する研究者や起業家との出会いが「生き方」そのものを問い直す体験となる。

 ハーバードでは、5回にわたるワークショップで学生たちがメンターとなり、白熱した議論が展開された。テーマは「成長思考(グロース・マインドセット)」「リーダーシップ」「意思決定」「同調」など。NHK『ハーバード白熱教室』を彷彿とさせる哲学的対話の中で、生徒たちは正解のない問いに向き合う。例えばトロッコ問題のようなモラルジレンマについて、ハーバードの学生と英語で意見を交わし、深めていく。時に議論は予想を超えて発展し、野球部員が多かったグループでは成長志向の議論の後、「コーチングとティーチングの違い」という概念を自分たちの部活動に当てはめ「三塁コーチャーはコーチングなのか、ティーチングなのか」と熱く語り合った。さらに印象的だったのは、ハーバードで小児医療の研究と臨床の最前線に立つ巣鴨OBによる講演だ。「実は巣鴨には追加合格だった」と謙遜するOBだが、現在はハーバード大学教授として世界トップレベルの研究を行う。その言葉は、生徒たちに「努力で未来を切り拓ける」という確信を与えた。

 MIT訪問では、技術が社会をどう変えるかという視点が加わった。元MIT博士研究員で、現在はスタートアップ企業を立ち上げた日本人研究者の講演では、「膜」の技術で世界の水問題を解決するという壮大なビジョンが語られた。研究を社会実装するための起業という道筋を示されたことで、生徒たちは「学問が社会貢献に直結する」という実感を得た。夜には現役のMIT生もホテルに訪れ、「遠い存在だったスーパーエリートが、実は自分たちと地続きの場所にいる」という発見があった。

 訪問先は大学だけに留まらない。Google社で出会ったのは、空港やアクアリウムをコンセプトにした自由な空間で、カフェのようにリラックスしながら仕事をする社員たち。オフィス全体が「自由な発想」を体現していた。そこで働く若手エンジニアは、渋滞緩和システムの開発など社会問題の解決に情熱を注ぐ。生徒たちは、イノベーションを生み出す環境が、単なる設備の充実ではなく、「社会を変える」という明確なビジョンと自由な文化から生まれることを体感した。

 帰国後、生徒たちに変化が現れた。「授業中、以前より一歩踏み出すようになった自分に驚いている」と語る生徒。「研究者になりたい」という漠然とした夢が、「研究者となって憧れの教授と語り合うために、今何をすべきか」という具体的な目標に変わった生徒。彼らは、失敗を恐れず挑戦する姿勢を掴んで帰ってきた。それはまさに、ハーバードで学んだ「グロース・マインドセット」であり、巣鴨が掲げる「努力主義」との共鳴だ。同行した松井慶太教諭(国語科)は「実感を持って刺激を受け、心に火をつけて帰ってくる。まさにコーチングだった」と語る。ボストン研修は、世界で活躍する人々との出会いを通じて、生徒一人ひとりが自分の羅針盤を手にする旅となった。

英国を縦断する探究フィールドワーク

 2024年からスタートしたSBB(巣鴨ビヨンド・ボーダーズ)は、夏休み中の2週間をかけてスコットランドからロンドンまで南下し、英国の歴史や文化を体感し思考する学びだ。追求するテーマは「冒険・自立・国造り」。現地で指導に当たるのは、英国イートン校サマースクールの最高責任者を務めたチャーリー先生をはじめ、現役のイートン校体育科主任、イートン校出身でウェリントン校の現役歴史教員の3名。巣鴨が英国イートン校サマースクールで構築した人脈から錚々たる面々を揃えている。

 プログラムでは体験重視を徹底。生徒たちは〈観察→まとめ→議論→内省〉という学びのサイクルを毎日行う。同行する教員たちは現地で歴史的背景などの説明を必要最低限にとどめる。これには自分の目で見て気づく力、observation skills(観察技術)を身につけさせる狙いがある。その上で、各班に1人付く英国人大学生のグループリーダーと班ごとに随時議論し、1日の日程を終えると3人の教員が加わり、生徒へ問いかけ、さらに深い内省へと導いていく。

チャーリー先生を囲んで行われる議論と内省の時間

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