豊洲から世界へ広がる探究
「GC」は、フィールドを広げながらコミュニケーション力や課題発見力を磨くプログラムだ。中1は、地元・豊洲でのフィールドワーク「TOYOASOBI」から始まる。イラストレーターに依頼して制作したオリジナルの「探Qマップ」を手に街歩きし、かつてのエネルギー基地から先端都市へと変貌した豊洲の歴史を体感する。
こうした取り組みの一つが、日の丸交通と連携した水陸両用バス「スカイダック」を用いた探究授業だ。教員と日の丸交通が共同制作したオリジナルアナウンスを聞きながら、湾岸エリアを陸と海の両面から学ぶ。海上からは明治時代の防波堤や旧港の痕跡が見え、埋め立てと産業発展の歴史が一望できる。陸上では物流センターや企業施設を巡り、なぜこの場所に特定の産業が集まったのかを考える。斎藤教頭は「中1には講義形式だけでなく、身近な現象にワクワクを感じられる授業を設定している」と話す。学びは「豊洲解剖図鑑」としてスライドにまとめ、7月の「SHIBAURA探究DAY」で発表される。
中2ではフィールドを長野県へ移す。3泊4日の農村合宿では前半2泊を農家での民泊に充て、農業体験を通じて都会とは異なる暮らしを肌で感じる。後半は農業の未来、観光振興、交通インフラ、少子高齢化対策の4テーマに分かれてフィールドワーク。30~40人の地元サポーターが生徒の提案に現実の視点から意見を返す。「最初はSNSで発信すれば解決すると思っている生徒も、『そんなのとっくにやってるよ』と言われ、現実を知ってから本当の思考が始まる」と斎藤教頭。生徒発案のプロジェクションマッピング企画がスキー場で実現した事例もある。30年にわたる地域との信頼関係がこの学びを支えている。
中3の海外教育旅行では、米国シアトルとオーストラリア・クイーンズランドの2地域に分かれ、それぞれ2つのテーマを軸に探究を行う。社会や産業の発展の仕方、自然環境の日米の違いを具体的に比較する中で、「ここまで違っていてよいのか」という気づきが既成概念を揺さぶる。豊洲、長野、そして海外へとフィールドを広げる設計が、視野の拡張にとどまらず、思考と発想の枠組みそのものを組み替えていくのだ。
探究の集大成と進化する未来
夏休みには、中学全学年を対象とした「SHIBAURA探究旅行」も行われる。燕三条、琵琶湖疏水、金沢・黒部の3コースが揃い、40名定員に100名超の応募がある人気ぶり。学年縦割りで上級生の視点に中1が刺激を受け、夜の探究ワークでは「探究ワークをしに来た」と語る生徒も。ものづくりと地域の歴史を結びつけた学びは理工系探究の真骨頂といえよう。
中3後半から始まる「総合探究」は、ITとGCの集大成。チームで「社会課題をものづくりで解決できないか」に挑み、プロトタイプの制作までを目標とする。海外教育旅行で知った外来種問題から鯉のハンバーグを開発したチーム、海上で野菜を栽培するプラントの試作に挑む生徒など、テーマは実に多彩だ。
同校は2027年度に大幅な探究カリキュラム改定を予定しているという。「世の中の変化が早過ぎて、マイナーチェンジでは間に合わない」と斎藤教頭。先行してきた探究教育が広く共有されつつある今、次の段階への移行を見据える。「本校の教育は大学合格がゴールではない。社会課題に立ち向かう勇気やものづくりへの気概を育むことを何よりも大切にしています」。十河信二が約100年前に抱いた「職員にこそ教養を」という願いは、形を変えながら今もこの学校の教室に息づいている。
(文/佐久間香苗)
所在地 〒135-8139 東京都江東区豊洲6-2-7
TEL 03-3520-8501
学校公式サイト https://www.fzk.shibaura-it.ac.jp
海外進学支援 有
帰国生入試 有
アクセス
豊洲駅(東京メトロ有楽町線)徒歩7分
新豊洲駅(ゆりかもめ)徒歩1分
国内外大学合格実績(過去3年間)
芝浦工業、東京、京都、東京科学、北海道、東北、大阪、九州、神戸、筑波、東京農工、電気通信、千葉、横浜国立、新潟(医)、金沢、広島、琉球、東京都立、防衛医科、防衛、慶應義塾、早稲田、上智、東京理科、帝京(医)、杏林(医)、明治、青山学院、立教、中央、法政、学習院など
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