スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は恵泉女学園中学校を紹介します。

科学の世界を照らすランターンたれ 女子教育のパイオニア校の新しい志
<3つのポイント>
①自ら実験をアレンジする「探究実験」で論理的思考を鍛える
②科学への興味をさらに広げる「サイエンス・アドベンチャー」
③創立者・河井道から受け継がれる伝統の「学燈ゆずり」
自分たちで計画を立てる「探究実験」
恵泉女学園では、中高一貫校ならではの授業として、中3で「探究実験」という試みを行っている。昨年は「身近な抗菌物質を調べる」「雪の結晶を作成する」「効率のよいカイロを作る」など10テーマがあり、同じテーマの生徒が班ごとに実験を行う。興味深いのは、通常、理科の授業では決められた手順通りに実験を進めるが、探究実験ではテーマをどう掘り下げ、どう実験するかは生徒たちに委ねられている点だ。実験のねらいを明確にし、それを証明する条件や手順、検証、考察をいかに展開していくか、高度な論理的思考が求められる。
取材に応じてくれたAさんが選んだテーマは「霧箱実験で身近な放射線を見る」というもの。予備実験では、放射線源となるモナザイト(モナズ石)を霧箱と呼ばれる特殊な装置内に置き、放射線の一つであるアルファ線の飛跡が絶え間なく出る様子を観察する。ところがAさんの班では、器具の破損により放射線を可視化する霧が発生しないトラブルが生じた。そこでメンバーと手分けして他の班からドライアイスを借り、装置そのものを作り変えることで霧の発生に成功。機転を利かせたリカバリーで事なきを得た。理科の田中裕大教諭は、こうした予期せぬトラブルも生徒自身の気づきを促すきっかけになると言う。「与えられたテーマで実験を行うだけでは、自分なりの疑問やそれを解決する論理的思考が刺激されないことも多い。しかし、自ら考えアレンジした実験では、テーマ設定や目的を証明することの難しさを知り、科学の深淵を体感することができるのです」。この言葉通り、Aさんは今でも霧箱実験装置の原理が頭に残っているという。さらに仮説や予想と異なる結果が出るのは失敗ではなく、原因を探ることで新発見が生まれるという「実験の本質を知ることができた」と話す。

- 1
- 2